オンカジは借金地獄への入り口だ。
「余剰資金で予算の範囲内で遊ぶ」と決めていた人間も、一回でもオンカジでの大勝利を経験してしまうと、その勝利の味が忘れられなくなるのがオンカジのおそろしさであり魅力でもある。
「ほとんど起こらない大勝」と「度重なる連敗」のバランスが極めて悪いオンカジは、最初の「予算の範囲内」というルールを守れなくなり「勝って取り戻す思考」をこじらせて、度を越えたベットを繰り返すケースになることがかなり多い。
オンカジを楽しめるタイプの人間というのは、数十万単位のベットをして数分のうちに3桁単位の金が動いて仮にそれをすべて失っても動揺せずに賭け続けられるくらいの「莫大な余剰資金」がある人間に限られていて、かつ、心がある程度は壊れていて「バカ賭け」ができなければならない、とも俺は考えている。
「余剰資金で遊ぶ」というその「余剰資金」が、もしオンカジで遊ぶには少なすぎる慎ましすぎる額である場合は、オンカジに飲まれて借金地獄へと簡単に足を踏み込む可能性が高いため注意が必要だ。
今回は、オンカジが原因で「借金地獄」に陥った場合に、法律事務所などと相談しながら手続きが組める「3つの債務整理」の方法を詳しく見ていきながら、「オンカジで借金を抱えるようなやつ」にオススメできる債務整理の方法や、その返済の可能性を見ていきたいと思う。
そもそもオンカジ借金地獄とはどのような状態か
借金地獄とは「借金返済のためにまた借金をする」という負のループに陥っている状態のことだ、とひとまず定義することができる。
一回目の借金は、「借金地獄」ではなく「借金」でしかない。その場合は、一回の借金で借りたお金をしっかりと返済すれば、借金はチャラになり解放される。
このとき「返済」のために「ギャンブルをやらない」という選択をして、一度目の借金をしっかり返済することができればいいのだが、オンカジなどを通して「借金をギャンブルで取り返す」などと考えた場合に借金地獄の釜の蓋が開くことになる。
「勝ったときに返済すればいいだろう」という考えも危険だし、ギャンブル、とりわけ「違法のギャンブル」であるところのオンカジの場合は「まあ、借金をしても最後は法律事務所に相談して自己破産でもすればいいだろ」と考えるのも、かなり危ないと言わざるをえない。
自己破産、個人再生、任意整理というオンカジ負債の債務整理の3つの方法
借金返済のための債務整理の方法には「自己破産」「個人再生」任意整理」の3つの方法がある。まずはこの3つの方法について簡単に見ていくことにしよう。
まず、「自己破産」だが、これは「裁判所を通した手続き」で「借金の支払いが全額免除になる」という債務整理の方法である。難しいことを取っ払えば、要するに「チャラになる」というやり方だ。
続いて「個人再生」。これも「裁判所を通した手続き」をして「借金を最大で5分の1から10分の1まで圧縮できる」という債務整理の方法だ。これは「減額」の方法となる。
最後の「任意整理」だが、これは「債権者との直接交渉」によって「利息カット」や「月額支払額の減額」を目指す債務整理の方法で、こちらは「借金額」は変わらない。あくまで「利息免除」「支払い難易度の軟化」の方法となる。
これらの債務整理の方法は、「借金の総額、収入、財産(家など)の有無」などの基準で選ぶことになるのだが、「オンカジ由来の借金」の場合は「借金の原因」だとか「借金を借りている人間のパーソナリティ(依存症であるかどうか)」などが関係してくる方法もある。
俺個人の意見としては、「任意整理」でコツコツ返すのがベストであるとしても「ギャンブル依存症」には難しく、「個人再生」の場合は裁判官に「ギャンブルから足を洗ってまともに生きていく」ことを証明する点で難しいというのがある。
となると、「自己破産」がベストか、というと、ここにもまた「ギャンブル」が原因であることの足枷、制度的な問題が発生する。
ギャンブル(オンカジ)の借金は自己破産できないこともある
基本的には「ギャンブルの借金は自己破産の対象としては考えられない」ということを抑えておく必要があるだろう。
自己破産には「免責不許可事由」という「借金を免責できない要件」が設定されており、「ギャンブル」はこの「免責不許可事由」であるところの「過大な浪費による借金」に該当するため、裁判所から許可が下りないケースも多数ある。
もちろん、ギャンブル原因の借金のすべてに「免責不許可事由」が適応されるわけではないが、ギャンブルが原因の借金で「自己破産」をする場合は、そうではない借金で自己破産をするとき以上に、ハードルや費用が高くなるということは理解しておくべきだろう。
特に、オンラインカジノは「違法」であり、違法な場所での「過大な浪費による借金」というのは、それだけで裁判における心証が悪く、スタート地点から分が悪い。
素人が自分だけの力で「オンカジ原因の借金の自己破産」を勝ち取るのは少々難しいだろう、というのが俺の見立てだ。法律事務所の力は必須だろう。
免責不許可事由とオンカジ原因の借金の関わりについて
自己破産における「免責不許可事由」は以下になる。
- 借金を返さないためにわざと財産を隠したり財産価値を下げる行為
- 特定の債権者だけに偏って返済する行為
- クレジットカード決済で商品を購入し、それを売るなどして換金する行為
- ギャンブルや、投資、不要なショッピングなどによる浪費行為
- 自己破産をする前提で新たに借金をする行為
- 裁判所に嘘の債権者一覧や借金額など虚偽の報告をする行為
- 過去7年以内に自己破産をしている
このように、しっかりと「ギャンブルによる浪費行為」が記述されていることがわかる。
他にも「自己破産をする前提で新たに借金をする行為」も、オンカジ由来の借金であれば、裁判官にそのように判断される可能性が高い。
また、ギャンブルをやる人間というのは基本的にズルいところや後ろめたさがあるので、法律事務所などでの相談なく、個人で裁判官の前に立った場合には「虚偽の申告」をすることも考えられるだろう。
ギャンブル(オンカジ)原因の借金に対して厳しくない個人再生
個人再生という債務処理の方法は、ギャンブル原因の借金に対して「自己破産」よりも態度が厳しくない、という特徴を持っている。
個人再生では裁判において借金の原因や理由が問われることがない。
となると、オンカジ由来の借金返済のための債務処理としては個人再生がベストなのではないかと思われるが、ここで「個人再生における不認可事由」を見ておかなければならない。
民事再生法174条2項から「再生計画不認可の決定」の項目を引用してみよう。
- 1.再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。
- 2.再生計画が遂行される見込みがないとき。
- 3.再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
- 4.再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。
ここで注目したいのは「再生計画が遂行される見込みがないとき」というものだ。
システムと現実は違う。個人再生という債務整理は「減額と許可のシステムだけ見るならオンカジで借金を作った人間に向いている」のだが、「返済の現実という場においてオンカジで借金を作るような人間には難しいところもある」という乖離があることを見逃してはならない。
個人再生の条件と認められないケース
個人再生の条件から、個人再生が認められないケースを以下に見ていくことにしよう。
- このままだと支払不能となるおそれがあること
- 将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること
- 再生債権の総額(住宅ローンなどの特定の債権は除外)が5,000万円を超えないこと
まず「このままだと支払不能となるおそれがあること」についてだが、これは「借金地獄」と呼ばれる負のループに突入するほどのオンカジ利用をする人間には、その「おそれ」しかないので問題がない。
続いて「収入」だが、オンカジで「借金地獄」に陥るような人間がまともな定職についていることが前提となっているため、これはなかなかキビシイ条件であるといえる。
ちなみに「アルバイト」などしか収入がない場合は「反復としての収入」とは認められない。
債権総額は問題ないだろう。5000万以上オンカジで借金を抱えることのほうが考えにくい。
さて、この条件を踏まえたうえで「個人再生が認められないケース」だが、まず、個人再生の手続き中に「浪費」や「ギャンブル」をした場合は一発アウトだ。
だから、個人再生で債務整理をする場合は「俺はもう絶対にギャンブルをしない」という鉄の意志を持つ必要がある。これが、俺が「オンカジ由来の借金に個人再生が向かない理由」と考えている最大の要因である。
オンカジ由来の借金を持つ「意志の弱い人間」が個人再生を目指すのであれば、法律事務所や家族などの助けを借りながら「絶対に更生します」という態度を少しもブレないようにしなければならない。
おそらく一人では無理だろう。書類の準備なども含めて、法律事務所に相談し、厳密かつ清廉潔白な「返済計画」を練る必要がある。
もし返済計画に対する鉄の意志を持つことができ、裁判官に更生の態度を証明できたなら「個人再生」で最大5分の1までの借金減額は見込めるだろう。
任意整理による債務整理という選択肢
任意整理による債務整理は、「借金をコツコツ返済していく」という鉄の意志があり、なおかつ「返済生活による暮らしの制限」が我慢できるなら、もっとも堅実な債務整理の方法となるだろう。
個人再生のときと同じく、「減額」などのシステム以上に、返済をする本人の「意志」の問題であることは前提としておさえておかなければなるまい。
任意整理のメリットは「裁判所を通さない」ことと「比較的費用が少ない」ということだ。
裁判所を通さない以上「ギャンブルで作った借金」であることが問題にされることはない。
また、法律事務所などの弁護士への依頼費用も、自己破産の場合がおおよそ「30万円~130万円」程度にあるのに比べて、任意整理はだいたい「5万円~15万円」が相場だから、オンカジで借金を抱えているような人間の懐にもやさしい。
もちろん、「債権者」の数が多い場合は、その都度依頼費がかかるので、「借金地獄」になって複数の債権者がいる場合は、法律事務所への依頼費もバカにならない額になることは忘れてはいけない。
任意整理ができる条件
任意整理ができる条件は「将来的に、利息などをカットした残額(残債)を3~5年以内に返済できる見込みがあるかどうか」である。
任意整理はあくまで「利息をカットして、元金(借金額)だけを支払うようにできる」というシステムであり、借金額自体の「減額」はない。
「借金地獄」が地獄の様相になるのは「利息」が膨らむことであることを考えると「利息カット」という任意整理はかなり有効な力がある。
また任意整理には「月額支払いの軽減」もあるため、月々の支払額だけで頭打ちだった場合などの救済策にもなる。
法律事務所などとの相談のうえで、返済計画をしっかり練り、一つ一つの債権者とのやり取りや返済をキッチリ行うことがもし可能であれば、「任意整理」はもっとも手軽で堅実な債務整理の方法である。
だが、繰り返し書くように「オンカジで借金地獄になるような人間」に任意整理のような「コツコツ返す」タイプの債務整理は難しいのではないか、というのが俺の個人的な考えだ。
借金の総額にもよるが、「任意整理」や「個人再生」などの「鉄の意志が必要な債務整理」ではなく、「一発逆転」ともいえる「自己破産」に賭けてみるというのが、「オンカジ由来の最後のギャンブル」としてはオススメかもしれない。
オンカジ原因の借金返済には法律事務所の力を借りよう
オンカジが原因の借金を返済するためには、法律事務所などの専門家の力を借りるのがベストだ。
必要書類の収集や、裁判所とのやり取り、裁量免責を認めてもらう陳述書の準備など、スタート地点から不利な状態にあるオンカジ由来の借金の債務処理は、ハッキリ言って素人には荷が重すぎる。
Fラン法学生の俺にこんなことを言われるのは癪かもしれないが、俺は基本的に「オンカジで遊ぶようなやつは例外なく無能」だと考えている。
オンカジで遊ぶだけでなく負けて借金を重ねるようなさらなる無能にとって「裁判はオンカジ以上に難しい」ということを、借金を重ねる前の段階から知っておく必要があるだろう。
だが、裁判に関しては、しっかりと能力があれば(能力があっても負けることがあるオンカジと違って)「ちゃんと勝てるルール」があるということも付言しておきたい。
法律事務所は「ギャンブルが原因の借金」の相談にも乗ってくれるし、解決のためのベストの道を探ってくれる力強い味方になるはずだ。